友人Aから「保育所を新設すれば国から施設工事費の3/4をもらえ、運営費も助成されるらしいよ」と何だか怪しい話を聞かされた。
「なんだそれ?」と聞き返すと「ネットでも調べられるよ」とのこと。早速調べてみた…それは内閣府が始めた「企業主導型保育事業」のようだ・・・。
企業主導型保育事業とは
目的は・・・
本事業は、企業主導型の事業所内保育事業を主軸として、多様な就労形態に対応する保育サービスの拡大を行い、仕事と子育てとの両立に資することを目的としています。
他企業との共同利用も可能で、地域住民の子供も受け入れができる(但し50%以内)。
特徴として・・・
- 従業者の働き方に応じ多様な保育サービスが提供できる。例えば延長・夜間、土日の保育、短時間・週2日のみの利用もできる。
- 複数の企業が共同で設置することができる。
- 他企業との共同利用や地域住民の子供も受け入れできる。
- 運営費・整備費は認可施設並みの助成が受けられる。
対象要件
●一般事業主で※子ども・子育て拠出金を負担している事業者であること※平成27年以前は児童手当拠出金とされていた。
●下記の①~③のいずれかに該当すること
①従業員向けに新たに保育施設を設置する場合
②既存施設で新たに定員を増やす場合
③既存施設の空き定員を他企業向けに活用する場合
※その他にも要件があります。詳しくはこちらを参照ください→内閣府資料
設置に向けての検討事項
1.設置方法の検討
設置のタイプは3つ
❶単独設置型・・・企業が単独で施設を設置・利用するもの
❷共同設置・共同利用型・・・1つまたは複数の企業が設置した施設を複数の企業が共同で利用するもの
❸保育事業者設置型・・・保育事業者が設置した施設を1つまたは複数の企業が共同するもの
従業員の子どもだけでなく、地域の子どもたちも含むことができます(全定員の50%以内に限る)。
2.運営方法を検討
自社で直接運営するか、保育事業者へ運営を委託する。
3.ニーズの把握
預かる子どもの年齢、開所時間帯などのニーズを調べる。
4.地方自治体と相談設置
新たに設置する場合や既存の建物を用途変更する場合には、建築基準法や消防法、食品衛生法等の各種法令、各自治体の条例等を遵守する。
5.設置場所
自社内での設置、待機児童が多い地区、従業員が住んでいる地域など。
6.構造設備・面積・定員
児童一人あたりの各室必要面積は、
乳児室1.65㎡ ※定員が20名以下の場合は3.3㎡。
ほふく室3.3㎡ ※ほふく前進ができる部屋
保育室、遊戯室1.98㎡、屋外遊戯場3.3㎡ ※屋外に遊戯場が設置できない場合は付近に公園や神社・寺院・教会などの境内があれば代替地となる。
7.職員の配置
乳児3人につき1人、満1歳以上~満3歳未満の幼児は6人につき1人、満3歳以上満4歳未満は20人につき1人、満4歳以上の児童には30人につき1人が必要です。また全ての合計人数にプラス1名を配置することが必要になります。
企業主導型保育事業の詳しい情報は企業主導型ポータルサイトをご覧ください。
現状と問題点
「待機児童を減らしたい」「社会貢献したい」「自社の人材不足が解消される」などの思いで始められる企業もあるでしょう。
しかし中には「国が助成してくれる」「儲ける」と安易に営利目的として事業を立ち上げ、計画の甘さから短期間で閉鎖し撤退する事例もあるようです。
また企業主導型保育所の利用状況は全国平均で充足率が49%と定員割れしているのが問題となっています。待機児童が多くいるという地区でも定員割れが生じているという不思議な現象もあるようです。これは企業の従事者・保護者は利用しているが、地域の子ども・保護者には受け入れられていない、認知されていないのではないかと推測される。自治体と連携しきれていない、企業のための保育所は厳しい立場にあると考えられます。
また人材不足も深刻な問題点の一つ。医療・介護・福祉・保育だけに限られていませんが、立派な外見の箱を作っても問題は中身の人材。保育士が足りない。専門学校や大学出の若い人材は、安定した企業を求めています。福祉関連では社会福祉法人や医療法人などが安定した企業。営利法人で運営している小規模保育所に応募する人は少ないのが現状なのです。
追記1・・・この企業主導型保育所は平成28年度からスタートし、今年(平成30年度)で3回実施されています。今年の応募はもうすでに終了しています(2018年7月31日終了) 。
追記2・・・平成31年(令和元年)の企業主導型保育事業計画は、現在検討中となっており、施設整備費助成金の申請を検討している事業者は、今後の内閣府の実施方針を十分に確認するようにしてください。詳しくは内閣府のホームページをご覧ください。今後の企業主導型保育事業の募集について (2019年4月6日追記)